SNSなどで多数のファンを持つ「インフルエンサー」を起用したプロモーションで、実施した企業の約3割が広告であることを明示するよう依頼していなかったことが、広告代理店などで構成する業界団体「WOMマーケティング協議会(WOMJ)」の調査で分かった。
WOMJが制作したガイドラインでは、インフルエンサーに報酬を支払い自社の商品・サービスをSNSなどで紹介させる場合、その旨を投稿に明記しなければならないと定めている。守られていないと、広告だと隠して宣伝するステルスマーケティング(ステマ)と見なされる可能性もある。
PR表記実施「あまりあてはまらない」は3割
調査は2018年7月13日~8月14日の期間、ウェブ広告やマーケティングの研究や情報収集を行う「Web広告研究会」に加盟する広告主企業37社に実施した。
WOMJは2010年に「WOMJガイドライン」を発表し、17年12月にはインフルエンサーマーケティングの拡大を受けて改訂版を作成。商品・サービスを宣伝するSNSの投稿には「PR」「タイアップ」「提供」などと明記するよう追記した。
調査はガイドラインの浸透度を確かめるため実施されたが、結果は芳しくなかった。インフルエンサーマーケティングを実施している企業のうち、
「広告主から金銭・物品・サービスなどの提供を受けていれば、その事実を消費者にわかるように表記してもらっている」
との問いに3割が「あまりあてはまらない」と答えた。
18年11月9日に東京都内で行われた「クチコミフェスタ2018」に出席した、WOMJの宇賀神貴宏理事は「(広告主とインフルエンサーの関係性が)正直に書かれていると評価する。後から(ステマだと)わかると炎上につながる」と呼びかける。
インフルエンサーにリスク、実際に被害も
WOMJが18年9月に10~40代の男女486人を対象にした調査でも、「企業からの依頼などを明らかにした投稿の印象」では、「とても良いことだと感じる」(29.8%)、「良い情報を教えてくれてありがたい」(24.1%)など消費者から好意的な声が多い一方、「企業からの依頼を隠すなどの投稿」では、「不快に感じる」(51.9%)、「わざとらしさを感じる」(29.8%)といった悪い印象を与えるようだ。
ステマのリスクはインフルエンサー側にもある。クチコミフェスタ2018に出席したアイドルユニット「MikaRika」のMikaさんは、過去に飲食店から依頼を受けて食事の写真を頻繁に投稿した際、PR表記を忘れてしまったため、「すごい贅沢してるね」などとファンから批判的なコメントが寄せられたという。
「こちらとしても、PRをつけないとプライベート以上のことが出てしまって(ファンから)違う目で見られてしまう」(Mikaさん)