完治はないが、終わりはある
――「永続的な通院が必要」か否か、についてはどうでしょう。
「薬は服用後、一定の血中の濃度を超えると効果が表れ、その後体から排出されるので体内で効果を発揮するレベルに達しなくなります。これを防ぐために、服薬を続けて常に有効な血中の濃度を保たねばなりません。先に申した通り、治療薬の処方は月1回が原則ですから、効果を保ちながら治療を続けることが必要です。
通院6か月ほどで、『治療前』『治療後』の写真を比較すると毛量が明らかに増えた箇所が確認できるようになります。ですので、半年は治療の必要があります」
――半年で効果が実感できれば、治療は止めても問題ないのですか
「完全に止めると治療前の状態に戻ってしまうことも多いのです。半年経過後は、本人の満足するレベルまで毛量を増やし、後は薬の濃度を調整しながら量を減らすことで毛量をコントロールしていきます。
治療薬をストップして脱毛予防の薬だけでコントロールする人や、最終的に脱毛予防の薬を止めても毛量を維持できる人と、ケースはさまざまです。それはAGAが誰しも常に同じペースで進行するわけではないからです。
男性ホルモンの分泌は一生の中で一定ではありません。年齢を重ねれば分泌量は落ち着いていきます。そうなると薬の量を減らしても、AGAの進行スピードは遅くなっていくことも考えられます。」
――薄毛治療に完治はあるのでしょうか
「治療によって髪が生えそろった時に『二度とAGAにならない』のが完治だとすれば、現代の医療ではまだAGAは完治しません。一時的に状態をコントロールするという意味での治療といえます。
ただし治療の終わりはあります。本人が『もう大丈夫』と感じた時です。カウンセリングでは、『髪の毛が必要、という時期はずっと付き合っていきましょう、もういいとなったら、付き合う必要はないですよ』と、よく話しています。人生において髪の毛の価値観は、年齢や仕事をはじめ周囲の環境など様々な要因で変化していくものです。となれば、薄毛に関してより深刻に考える時期もあれば、悩みから自然と離れていくことが出来る時期もあるのです。」
――最後に治療を検討している人に向け、優良なクリニックを選ぶポイントを教えてください。
「AGA専門のクリニックであることや、クリニックとしてどのくらいの患者さんを診療しているかがポイントではないでしょうか。また、実際に治療前に数か所訪ねて『ここなら良いな』と思えるクリニックを選ぶのも重要です」