流行歌に語らせる世相
当「コラム遊牧民」では、政治色の強い時事コラム、芸能やスポーツなどの専門コラムはめったに採り上げない、というより意識して避けている。ただ、大衆歌謡には当時の世の中が反映されており、堀井さんの連載もすぐれて世相コラムだと思う。筆者は世相を語らせる素材として、流行歌に関する見識を駆使している。
堀井さんより4歳下の私には、「柳ヶ瀬」の3年後に歌手デビューしたピーター(池畑慎之介)さん(66)の印象がより鮮烈だった。中学生になりたてだった。
上記コラムも、美川さんに抱いた「違和感」を説明する文脈で、「数年後、高校生になってから観たATG映画『薔薇の葬列』に登場するピーターを見たときと共鳴していて...」と触れている。中性的な美貌は、思春期に入らないと理解できないものなのだろう。
芸能界のご意見番にして、ワイドショーのネタ元になった感のある美川さんだが、和田アキ子さんと同様、歌での実績や貢献は正当に評価されるべきだ。
その意味で、全盛期を知るライターによるうんちく系コラムは貴重だと思う。大河が海に流れ込んでからでは想像しづらい源流の存在と、パイオニアとしての存在感を思い起こさせてくれるからだ。
冨永 格