映画「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督が2018年10月31日夜、東京・六本木で開催中の「第31回東京国際映画祭」のトークセッションに登壇した。
大ヒット中の本作品の反響について、感慨深げに語った。
意図せず「映画の醍醐味を詰め込んだ一作」に
今年6月に東京都内の劇場2館で公開した本作品は、10月時点で全国330館上映、観客動員数200万人を記録した。映画祭では「Japan Now」部門に選出された。
トークセッションは上田監督と、同部門のプログラミング・アドバイザーである安藤紘平氏が登場した。37分間のワンカット撮りについて安藤氏に聞かれると、「撮る時間が長ければ長いほど難しくなっていく。スタッフ、キャストの力をひとつに合わせないと撮れない」と上田監督。「その難しさが、映画制作者にとってすごく大きなロマン」だと話した。
上田監督にとって「カメラを止めるな!」は「自分の好きなものを全部詰め込んだ」「自分の引き出しにあるものを全部出した」映画だという。それが結果的に「意図せず、映画の醍醐味を詰め込んだ一作」になり、「(多くの人が興味をそそられる)普遍性のある映画になってくれた」と喜んだ。一方で、今後の映画制作では「(アイデアを)使い果たしたので、また仕入れないと」と苦笑いだった。
「くやしかった」との感想に「はっ」とした
上田監督はある時、「カメラを止めるな!」を見た会社員の「くやしかった」「羨ましかった」という感想にはっとさせられたという。映画制作関連の仕事に携わっていない人が、なぜ悔しいといった感情を持つのかが気になったのだ。考えた結果、映画の登場人物たちが「ひとつのことにひたむきに頑張る」姿を見て、その会社員が「自分はこんなに頑張れているのか、こんなに楽しめているのかと感じて、そういう(悔しいという)思いを持ってくれたのかな」との見解を話した。
「カメラを止めるな!」は世界24か国、60の海外映画祭で上映され、受賞の数も10以上。こうした反響には「世界中どこにいっても仲間はずれにならないということにびっくりした」と上田監督。
最後に、さらなるヒットに向け、ファンにメッセージを送った。
「今日(10月31日)で(上映開始から)131日目なんですけど、ありがたいことにまだ100館以上(の劇場)で上映していただいています。まだまだ広がる映画だと思うので、見た方は頭の中に浮かんだ方に広めてください」