来年2月からはツアー
CHAGE&ASKAが日本の音楽シーンに遺した功績の一つが94年に始まったアジアツアーだ。香港、シンガポール、台北、北京、ソウル、上海。日本と同じ機材を持ち込み、事前にキャンペーンに何度も足を運び、現地の聞き手にチケットを売る。日本からのツアー動員に頼らない形で成功を収めた最初の例だろう。
彼のソロツアーでも香港、上海、バンコク、台北、シンガポールなどで複数回のライブを行っている。日本のコンサートツアーの一環としてアジアを回るというそれまでになかった形を作り上げた。
「日本で売れているからと言ってアジアで成功すると思ったら大間違い。ちゃんと階段を上って行かないと認知してもらえません。僕らも向こうのスタッフに面と向かって、日本人は大嫌いです。でも、君たちは別なんだよなあ、って何度も言われましたから。凍り付きますよ」
アジアツアーに同行取材した時に、その様子は何度か見ることが出来た。ソウルでの記者会見ではストレートに「歴史認識を聞かせてほしい」と聞かれることもあった。まだコンサートで立ち上がって聞く習慣がなく、警備員の制止を振り切って客席が総立ちになる光景が各地で繰り広げられた。その当時のスタッフの後輩や子供たちが今、アジアのコンサートを支えている。「Made in ASKA」の中の97年のアルバム「ONE」のタイトル曲や「ID」は、まさにそんな時代の歌だ。
「Made in ASKA」の中の新曲「メリーゴーランド」が気になった。ディズニー風な情感豊かなストリングスに載せて歌われるのは、少年時代の記憶だ。
「年齢もあるんでしょうけど、福岡に帰ると小学校の同級生が集まって来るんです。それぞれの記憶がみんな違う。卒業文集を引っ張り出したりして盛り上がる。成功した者もいればそうとも言えない奴もいる。あの曲で言いたかったのは、俺たちは少しの間、冒険をしてきたと思えばいいんじゃないか、ということですね。今だから書ける曲を入れようと思いました」
二枚のベストアルバムに刻まれた30年と60年。愛と冒険の記憶。彼は、今年の8月、CHAGE&ASKAのデビュー日を前にファンクラブの会報誌で今後の活動は「CHAGE&ASKAのASKAのソロ活動ではなく、ソロアーティスト・ASKAとして」と書いていた。
11月5日からシンフォニック・オーケストラをバックにしたツアー「THE PRIDE」が始まる。来年の2月からはアルバムを携えたバンドのツアー「Made in ASKA~40年のありったけ」も発表になった。アジアでの公演もありそうだ。
CHAGE&ASKAのデビューから40年。「愛と冒険」の旅は新しい章を迎えようとしている。
(タケ)