タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」
「ずっとベストアルバムには関心がなかったんです。今までに出たものの、全部スタッフに任せていた。今回はこの時期だから意味があると思った。こういう形は初めてですね」
2018年10月16日に「We are the Fellows」「Made in ASKA」と二枚のベストアルバムを同時発売したASKAは、筆者のインタビューにそう言った。
二枚のアルバムはそれぞれ違う成り立ちを持っている。「We are the Fellows」は、彼のファンが選んだ曲がランキング通りに並んでおり「Made in ASKA」は、それを踏まえて彼自身が補足的に選んだ曲を年代順に並べている。その中には他の人に書いた曲を初めて歌いなおした曲や今回のための書き下ろした新曲もある。彼が初めてソロアルバム「SCENE」を発売したのが88年。つまり30年前、そして、今年の2月に還暦を迎えた。二枚のアルバムの中にはソロ30年と人生60年という二つの時間が刻まれていることになる。
音楽は若い人たちだけのものじゃない
ASKAがCHAGE&ASKAでデビューしたのは79年。ソロアルバムの発売はデビュー10年目だ。
「当時はソロを出すとグループが解散と思われる時代でしたからね。自分ではやりたいと言ってたんですけど通らなかった。他人に書いた曲を歌いなおすということではどうですか、ということで了解をもらったのが最初です。ライブもやりませんでした」
二枚のベストアルバムにはそれぞれに特徴がある。「We are the Fellows」は、1位が91年のアルバム「SCENE II」の中の「けれど空は青」で3位が「はじまりはいつも雨」。代表曲から去年のアルバム「Too many people」収録の「東京」や「と、いう話さ」など13位まで。それぞれの時期のアルバムの曲が網羅されている。
「参りました。僕の予想の遥か上を行っていた。『はじまりはいつも雨』はきっと入らないと思ってたんです。マニアックなファン心理としては、ああいう誰もが知ってる曲は外しますよね。でも、ファンの人たちが今、ASKAを紹介するとしたら必要と思ってくれたんでしょう」
彼が自分で選んだ「Made in ASKA」は対照的に誰もが知っているヒット曲は一曲目の「MIDNIGHT 2 CALL」くらいかもしれない。88年の一枚目のソロアルバム「SCENE」の中の曲。シブがき隊への提供曲。ニューミュージック系のアーティストがジャニーズ事務所のタレントに曲を書くはしりになった曲だ。他にはアルバムの中の曲や岩崎宏美ら女性シンガーとのデュエット曲もある。
年代順になった「Made in ASKA」があることで見えてくるのは「ラブソングの変遷」ではないだろうか。5曲目の「はるかな国から」はいじめで自殺した少年がテーマだ。後半に並んでいる「心に花の咲く方へ」や「いろんな人が歌ってきたように」は、「愛について歌うこと」についてあらためて向き合ったような曲だ。
男女の恋愛を歌ったラブソングから同じ時代を生きている人たちに対しての愛情。そんな流れは2017年のアルバム「Too many People」の中の「FUKUOKA」にたどり着く。
CHAGE&ASKAではやらなかったことやれなかったこと。ソロアーティストとして新しい時代にどう対応してきたか。そうやって歌ってくる中で「愛のかたち」がどう変わってきたか。
「デビューした頃は背伸びした歌を書いてましたけど、40になるくらいかな、音楽は若い人だけのものじゃないと思うようになって。同じ時代に同じアニメに夢中になったような人たちに向けて歌を作っていきたい。自然にそうなって行きましたね」