西日本豪雨、相次ぐ台風による水害、大阪と北海道での地震と2018年夏は大規模な自然災害が頻発した。同時に災害に対する備えや支援方法も、改めて議論となった。
交流サイト(SNS)最大手のフェイスブックでは、災害発生時に活用できる機能の拡充を進めてきた。同時に日本では、国内で起きた大規模災害の被災地に、独自の支援を行っている。フェイスブックジャパンの長谷川晋代表に、支援に対する考え方を聞いた。
災害支援活動は「会社としての存在理由」
――単刀直入に、なぜフェイスブックが災害支援を行うのでしょう。根底にある考え方を聞かせてください。
長谷川氏 まず、フェイスブックはグローバルで「コミュニティーを応援して人と人の距離を縮める」をミッションに掲げています。インターネット上でつなげるだけでなく、同じ目的意識や課題、興味を持つ人が形成したコミュニティーを積極的にサポートします。
災害時のような危機的な状況に陥ったコミュニティーに対する復興支援や、被害を抑えるような「安全なコミュニティーの構築」も、会社のピラー(柱)と定義しています。災害支援活動は、私たちの「会社としての存在理由」なのです。
今年、フェイスブックが日本語版をスタートして10周年です。フェイスブックジャパンでは、この先10年を見据えて「どこに注力するか」討議を重ね、コミュニティーをつないで日本をもっと輝かせるために貢献する方法として、日本のさまざまな課題をテクノロジーやコミュニティーの力を使って成長の機会に変えていくと定めました。
その課題のひとつが、有事の対応です。残念ながら今後、日本で大規模な自然災害が起きる可能性は高い。過去も大規模災害を乗り越えてきた日本なら、それでも人と人とが助け合って被害を最小にとどめたり、復興を早めたりといった見本を世界に示せるポテンシャルを秘めている。フェイスブックが助け合いを促進するコミュニティーやテクノロジーを提供すれば、その可能性はもっと高まるでしょう。
――すでに多くのユーザーが、災害時にフェイスブックを活用しています。長谷川代表の目にはどう映っていますか。
長谷川氏 災害時のフェイスブックの利用に関して、「3本柱」で考えています。一番目が機能拡充、二番目が災害発生前の啓もう活動、三番目がコミュニティーや地方自治体との連携です。そのうち機能は、ユーザーの皆さんのフィードバックや使い方がきっかけでどんどん広がるケースがほとんどです。
一例が「セーフティチェック(災害時安否確認機能)」です。当時、米国のフェイスブックでインターンをしていた日本人が、東日本大震災で日本の友人に連絡できない状況で、「フェイスブックで安否確認ができたら」と考えて、一晩でプロトタイプを作り上げたのです。後日、正式な機能となりました。2017年には「コミュニティヘルプ」機能で、被災者が必要な物資や避難場所の情報を探したり、ユーザー側から提供したりできるようにしました。これもユーザーの実際の活用法を参考にしたのです。
私自身、1995年の阪神・淡路大震災で被災した経験から、情報を正確かつタイムリーに得るのがいかに重要かを学び、有事の際の人と人とのつながりがパワーを発揮することを実感しました。2011年の東日本大震災発生時はシンガポールにおり、遠隔地からのサポート手段が限られていました。そこで、地理的な制約を超えて支援ができる仕組みが必要だと気づきました。