何を聴きとるかは自由
「重力と呼吸」は、彼らのキャリアの中でも96年の「深海」、04年の「シフクノオト」以来、3作目の日本語タイトルのアルバムになる。
音楽業界も含めたバブルの頂点のような時代にあらゆる面からの問いかけを投げかけたような「深海」、桜井和寿が体調不良でツアーを中止せざるを得なくなった後に出た「シフクノオト」。それぞれに特別な背景を持ったアルバムのように聞こえた。
近年、ほとんどメディアに出ない桜井和寿は、デビュー前から彼らの取材をしている、今は尾道在住の音楽ライター、森田恭子が一人で編集・発行している手作り雑誌「Lucky Raccon」(ラッキーラクーン)に準レギュラー的に登場している。
彼は、現在発売中のVol.46のインタビューの中でアルバムのタイトルについてこう話している。
「自分では明確な答えがありすぎちゃって、そういう質問に答えると、このアルバムのタイトルにした意味がないというか。このアルバムを聴いて、きっといろんなことを想像するじゃないですか。だけど『重力と呼吸』というキーワードは必ず通らなきゃいけない、アルバムタイトルがそうだから。それを通ってもらうことで、より楽しんでもらえると思うから、わざとちょっと変なタイトルにしてるんです」
そんな話は「というわけで、答えません」で終わっている。
アルバムタイトルというよりキーワード。誰もがそんな二つの言葉を入口に聴く。そこで何を聴きとるかは、聞き手の自由だ。
「重力と呼吸」。バンドの音の重心の低さとメンバー4人のあうんの呼吸。更に、バンドと聞き手の間にある「引き合う力」と「息遣い」。そして、今の時代を生きていく上で大切なもの。そんな意味も込められているように聞こえたのは筆者だけだろうか。(文中敬称略)
(タケ)