「経験談爆弾」にご用心 武田砂鉄さんが年長者の助言に思う理不尽

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結婚は各人各様

   武田さんが言わんとするところは、不確かな社会通念や、薄っぺらな経験だけを頼りに分かったような口をきくな、ということだろう。とりわけ、それが年少者への「アドバイス」という形をとる場合はよろしくない。

   そもそも分野を限れば、年長者より濃密な経験を積んだ若者はいくらでもいる。年の功だけで説教できるほど、現代社会は単純ではない。年上が有利に見える恋愛や結婚に関する助言もしかり、である。極めて私的なチャレンジだからケース・バイ・ケース、各人各様であり、一般的なアドバイスは成立しにくいのだ。

〈この世で最も危険な食べ物はウェディングケーキである〉
〈結婚を宝くじに例えるのは誤りだ。くじなら当たることもある〉
〈恋で盲目になっても案ずるな。視力は結婚で回復する〉...

   結婚にまつわる古今の名言に毒舌ジョーク風が多いのは、万人に通じる真面目な助言がしづらいことの裏返しではないか。「あなたのためを思って」の説教も、多くは後輩の役に立つまい...よほどの失敗談でもない限り。そもそも、説教を装い自慢話をされては大迷惑。幸せな結婚体験ほど退屈なものはない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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