みんなの意見がなぜ正しいのか、どういう時に正しいのか

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■『「みんなの意見」は案外正しい』(ジェームズ・スロウィッキー著、角川書店)

「集合知」の威力についての古典的事例

   『「みんなの意見」は案外正しい』(原著2004年、邦訳2006年)は印象的な事例の紹介からはじまる。1906年の英国プリマスで、科学者ゴールトンが、恒例の食肉用家畜見本市に出かけた。雄牛の重量のコンテストが開かれており、チケットを購入した人たちがその重さを当てようとエントリーしていた。ゴールトンは、家畜についての素人を多く含む約800人の参加者の回答をみせてもらった。ゴールトンは、回答者の平均値はまったく的外れな値になるだろうと予想していた。平凡な人々の能力は、一握りの優れた人にはまったく敵わないはずである。さて、予想の平均は1197ポンドであった。実際の重さはというと、実に1198ポンドであったのだ。

   「集合知」に関する事例、その背景にあるロジックを一般向けに解説する書籍として、本書は古典的な地位を占めている。集合知とはいっても、雄牛の目方を当てるような純粋な認知に関するものばかりではない。人混みを歩くような調整の問題、少人数のグループで課題を解決する場合、市場、民主主義まで様々な問題がテンポよく料理されていく。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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