浅田真央がバンクーバー五輪で使用した曲
実際この「幻想的小品集」の中でも、この「第2番 前奏曲」は飛びぬけて人気が高くなり、ピアニストとしても活動しつつあったラフマニノフは、演奏会のたびに、この曲をアンコールで弾いてくれ!という要望が引きも切らず寄せられ、さすがに嫌気がさしてしまうほどであったと伝えられています。
その後、ラフマニノフは、ショパンなど先輩の作曲家が完成させた24の調すべてでの「前奏曲集」を作曲して完成させるので、題名がたまたま「前奏曲」であったにすぎない本来は「幻想的小品集の2曲目」であるこの曲は、前奏曲集の1曲との差別化を図るためか、ますます「鐘」と呼ばれるようになります。
「鐘」の人気はさらに加速して、オーケストラの編曲バージョンも作られ、フィギュアスケートの浅田真央選手がバンクーバーオリンピックの時に使用したために、日本のスケートファンにも広く親しまれています。
ラフマニノフには、まったく別の独唱と合唱による「鐘」という歌の曲集もあるのですが、現在、「鐘」というと、このピアノ曲...本来は「前奏曲」と名付けられていた、この曲を指すのが通例となっています。
音楽院を卒業したばかりで、作曲家としても、ピアニストとしてもプロとしてこれから、というときに大ヒットとなったこの曲は、まさに彼の存在を世の中に知らしめる「鐘」となって大いに響いたのです。
本田聖嗣