元恋人からよき戦友へ
ご存知の通り、小島さんはTBSアナウンサーの出身だ。2010年に退社独立、夫の退職を機に2014年から生活の拠点をオーストラリアに移し、日豪を往復している。高1と中1の息子さんがいらっしゃる。
自身も帰国子女で、局アナを経て海外移住という「特殊性」ゆえ、彼女の生き方指南や子育て論には一般性が乏しい、との見方があるかもしれない。しかし私はこの一篇を、ひとつ下の世代への優しいエールと受け取った。
人生の転機は30代に訪れやすい。どうかすると、大きな異動や転職、結婚、出産などが一度にやってくる。激変のたびに友だち付き合いはシャッフルされ、絞り込まれて40代に引き継がれてゆく。
あれもこれもと頑張る人生の下級生に、小島さんは月並みな励ましではなく「武装解除」の助言を送る。己の武装を解くには勇気がいる。幾多の雑音を跳ね返してくれたヨロイを脱ぎ、反撃に備えて磨いてきた剣を脇に置く。そのうえで、初めて見えてくる世界がある。
小島さんの同業でフジテレビ出身の近藤サトさん(50)は、数年前から白髪染めをやめたそうだ。「若く見られたいと思っていたのが、楽になりました」と朝日紙上で語っていた。若いほど美しいという呪縛からの自己解放、これぞ武装解除である。
小島さんによると、男性も30代で友だちが減るらしい。彼女の結論は「VERY世代は、夫婦が元恋人からよき戦友になるいいチャンスなのかも。健闘を祈ります!」である。
私のようなアラカン世代ともなると、職場の戦友たちは早世で減り続け、増える知り合いは医者ぐらい。武装はとうに脱いでパッパラパーの丸裸、染める前に白髪が抜けていくという毎日だ。40代による30代へのアドバイスは、正直、どれもまぶしいばかりである。
冨永 格