教科書を理解できない子どもたち―最優先で取り組むべき課題―
著者曰く、AIの弱点は、万個教えられてようやく一を学ぶこと、応用が効かないこと、柔軟性がないこと、決められた枠組みの中でしか計算処理ができないことだという。したがって、人間がAIにできない仕事をやっていくためには、一を聞いて十を知る能力や応用力、柔軟性、フレームに囚われない発想力などが必要ということになる。
著者は、大学生、そして中高生を対象に、数学や読解力の調査を行う中で、現在の子ども達の相当数が、基礎的な読解力、著者の言葉を借りれば「教科書を読んで内容を理解する力」が欠けているという驚くべき現実を知ることとなった。
2万5000人の中高生を対象に実施した読解力調査の結果からは、
・中学校卒業段階で、約3割が(内容理解が伴わない)表層的な読解もできない
・高校生の半数以上が、教科書の記述の意味が理解できていない
・読解力と家庭の経済状況には負の相関がある
などがわかったという。
近い将来、AIが今ある仕事の半分を代替する時代が到来すると、読解力の低い中高生たちには、できる仕事が無くなってしまう。同時に、社会にはAIにできない仕事ができる人材が不足するため、皮肉なことに、企業にとって深刻な人手不足となる。
こんな未来予想図を回避するために、著者は、子どもたちがAIにはできない仕事に従事できる能力を身につけられるよう、力を尽くすべきだと熱く語る。具体的に今、取り組むべき優先課題は「中学校を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすること」だという。
こうした子どもたちの現状は、最近になって生じたものなのか、それとも、以前から既にこうした状況だったのかはわからない。しかし、AIというモンスターがこれまでの仕事の多くを奪っていってしまう可能性を考えれば、AIに代替されることなく、人間にしかできない仕事を為すことができる力を養成することは、最優先の課題であろう。何よりも、これは子どもたちの未来への投資でもあるのだから・・・。
JOJO(厚生労働省)