「俺についてこい」の上司 岡本真一郎さんが明言「ついていくな」

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面従腹背のススメ

   上司についって行ったはいいが、振り返れば誰もいないという状況はビジネス界でもありがちだ。ただ今どき、飲んだ勢いにせよ不用意に「俺についてこい」などと言う管理職は少ないだろう。そんな「昭和型」について行く若手はさらに珍しい。

   岡本さんは、不幸にも「俺に...」型の部下になった場合の対処法も記している。それは、面従腹背しながら反面教師として糧にする、というものだ。なんというハードボイルド。

   昭和末期に駆け出し記者だった私は、以上の指南を読んで片手に余る顔を思い浮かべた。酔うたびにじっとこちらの目を見て、「君は...俺と一緒に死ねるか」という先輩もいた。幸い、夕刻までは合理的な思考をする人で、そう言われるたびに「イヤですよそんなの」と返した私も生き残れた。

   男も女も、ひとたび社会に出たら基本は孤独である。上司や部下との人間関係も、自己責任で乗り越えるほかない。とりあえずついて行くべきは、己の良心と直感だろう。結果の吉凶はともかく、後悔しないにはそれに限る。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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