「さくら(独唱)」後、「桜ソング」が定番テーマに
彼が「さくら(独唱)」を発売したのは2003年。平成15年だった。その後に訪れる「桜ソング」の先駆けとなったことは記憶に新しい。
「桜ソング」がJ-POPシーンの定番テーマになったのは、彼の「さくら(独唱)」以降だったことに気づいている人がどのくらいいるだろうか。特に70年代から80年代にかけてはまず思い浮かばないだろう。
なぜなら、その頃まではまだ戦争の記憶があったからだ。「桜」という言葉で連想されるのは「同期の桜」に代表される「軍歌」であり「桜」は二の足を踏んでしまうテーマだった。「さくら(独唱)」は、「桜」を日本の四季を象徴するテーマとして戦争から解放した。
「さくら(独唱)」だけでなく、森山直太朗の歌の言葉は御徒町凧が手掛けている。歌の言葉として書かれた「歌詞」ではない純粋詩にメロディーをつけて歌うということが森山直太朗の他のシンガーソングライターと違う点だろう。アルバムにも「人間の森」「糧」「罪の味」など、一般的なポップスとは違うテイストのタイトルが並んでいる「822」は、そんな作風の中で傑出したアルバムとなった。タイトルは発売日が8月22日と言うのがヒントだったという。読み方は「パニーニ」である。
「あまりに色んなエネルギーがあって言葉ひとつには集約できないんで、最も意味のなさそうなものがいいんじゃないか。御徒町が提案した時にはみんな失笑だったんですけど。いい記号として立ち上がった感じでした」
デビュー15周年は単に年月の区切りではなくなった。「822」は、大きな転機となるアルバムになったと思う。
10月から来年の6月まで50本以上が組まれている全国ツアー「人間の森」が、その仕上げとなるに違いない。
(タケ)