「スポーツを行う際又は指導する際に問題解決の手段として、暴力、パワー・ハラスメント行為(直接的暴力、暴言、脅迫、威圧等)を行うことは、厳に禁ずる」(日本スポーツ協会「倫理に関するガイドライン」より)
だが近年、大相撲、アメフト、ボクシング、レスリング、体操と、スポーツの世界で暴力・パワハラ問題が立て続けに発覚している。プロ野球、中日ドラゴンズの元監督・落合博満氏(64)も、暴力が止まない現場を見てきたひとり。「(スポーツ界からの暴力排除は)この先何十年もかかると思う」というのだ。
「丸5年かかりました。こんな簡単なことが」
野球と暴力――。高校野球ではたびたび問題となり、2018年だけでも神村学園高(鹿児島)、桐生第一(群馬)、健大高崎(群馬)、高知高(高知)など有力校での暴力事件が明るみに出た。17年7月には、元プロ野球選手や元高校球児の証言をもとに、日本球界の暴力の実情を暴いた『殴られて野球はうまくなる!?』(講談社)が上梓された。
球界のレジェンド・落合博満氏は18年9月2日放送の「サンデースポーツ」(NHK総合)に出演した際、内部から「暴力排除」に挑んだ経験を明かした。
03年に中日の監督に就任すると、まず「何があっても暴力をふるった時点でユニフォームを脱がせるからな」と宣言し、コーチや、選手、スタッフら球団関係者全員から同意を得たという。
だが、チーム内での暴力一掃には「丸5年かかりました。こんな簡単なことが、120人くらいの所帯で」「それだけ俺が言ったことが周りに信用されていなかった」と明かした。
体操の暴力問題にも言及
こうした経験を踏まえ、落合氏は暴力根絶のためには、
「体操でも何でも大きな所帯では、全部に浸透させるんじゃなくて、組織の中の小さなところから地道に広げていくしかない」
とアドバイス。だが、スポーツ界全体で暴力をなくすには、
「この先何十年もかかると思う。『絶対ありません』と言う時代は私が生きている間には訪れないと思ったほうがいい。それだけ時間がかかる難しい問題」
と悲観的な見方をしている。