沖縄発のラブソングを届けるために
DISC1に「そこにあるべきではないもの」という曲がある。一位になった2004年のアルバム「TRUNK」の中の曲だ。
歌われているのは「老婆」である。炎天下の砂浜で「そこにあるべきではないもの」を拾い歩く姿を見て思うこと。「捨てる軽さ」と「拾う重さ」と「手を差し伸べられないふがいない僕」。悲しみも憎しみも全て飲み込んで輝くこの島。「この地に似合わないものは思い出とともに持ち帰って」と歌われている。
歌詞の中に「そこにあるべきではないもの」が何であるのかは歌われていない。
夏休みに沖縄に行かれた方、「この地に似合わないもの」はきちんと持ち帰ったでしょうか。
HYを全国区の存在にしたのは、何と言っても2010年の「紅白歌合戦」だろう。その時に歌われたのがDISC2に入っている「時をこえ」だった。
全曲解説には許田信介がこう書いている。
「実際に泉が戦争を体験したおばあちゃんから話を聞いて、命の尊さを歌いあげた曲。また、沖縄の伝統であるエイサーの太鼓が命の鼓動のように響いてくる一曲です」
おじい・おばあから聞いた戦争体験と「命どう宝」という言葉。伝えなければいけないかけがえのないもの。曲の中にはアメリカ人のゴスペルコーラスも加わっている。アルバム発売当時、作者の仲宗根泉は、「この曲は彼らと一緒に歌わないといけないと思った」と話していた。
結成18年。2013年には東京の事務所から独立。自分たちのレーベルも持った。海辺に作ったスタジオがその拠点となっている。
原点を見失わない。時の流れに惑わされず音楽に向き合っている。家族、友人、そして自然――。
沖縄の海は青い、そして空は広い。
彼らの曲を聞きライブを見る。そして話をするたびにどこかほっとするのは、そこにいくつもの希望を見るからなのだと思う。
HYは、9月から来年にかけて3度目の全都道府県ツアーに出る。
沖縄発のラブソングを届けるためにだ。
(タケ)