雑誌の「平均寿命」は?
このコラムを読んで、「平均」とされるものは実は誰の数字でもない、ということを改めて思った。たとえば、40人の同窓生の中に大成功したIT企業社長がいる。彼の年収は1億円で、残る39人は非正規労働や失業中で平均年収300万円。この状況で「クラス平均は540万円強」と言われても、その数字にさしたる意味はない。
正直に書けば、それより何より「クロワッサンに老後指南が載る時代になったのか」という感慨が大きかった。「貯まる家計簿」は荻原博子さんとの交互執筆で、彼女が書いた前号のテーマも「不安が募る老後資金。本当はいくら必要なのか?」である。
クロワッサンは創刊が1977年、マガジンハウスがまだ平凡出版だった時代で、当時は「女の新聞」を標榜していた。コアな購読層は独身女性から働く既婚女性に移り、いまやミセスの暮らし全般をサポートする。雑誌は愛読者と共に、確実に年をとるのである。
親子三代といえば聞こえがいいが、昨年の創刊40年で編集長氏が語っていたように「おばあちゃんが読んでいた雑誌」でもある。雑誌の活力を保つには、長期読者の「卒業」をありがたく見送りながら、より若い層を意識したリニューアルを重ねていくしかない。
雑誌の「平均」寿命にも大した意味はないが、それを延ばすための努力には大いに意味がある。一篇の家計コラムから、そんなことを考えた。
冨永 格