「アラベスク」...連続するアラビアの模様の名前を付けたシューマンのピアノ曲

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   今日は、シューマンのピアノの曲、「アラベスク」を取り上げましょう。演奏時間6分ほどの、性格小品といわれる独立した単独曲です。

  • アラベスクの楽譜冒頭、ドイツ語の「アラベスケ」と記されている
    アラベスクの楽譜冒頭、ドイツ語の「アラベスケ」と記されている
  • モチーフが繰り返して、楽譜自体が「アラベスク模様」に見える
    モチーフが繰り返して、楽譜自体が「アラベスク模様」に見える
  • アラベスクの楽譜冒頭、ドイツ語の「アラベスケ」と記されている
  • モチーフが繰り返して、楽譜自体が「アラベスク模様」に見える

イスラム芸術のすばらしさ伝える幾何学模様

   キリスト教文明圏のヨーロッパの人たちにとって、「アラビア」というのは特別な響きがありました。もちろん、アラビア、すなわちイスラム教圏は異宗教として対立の歴史もありましたが、もともと異宗教にも寛容な宗教でもあるイスラム教は、中世の時代学問が栄え、ヨーロッパにルネッサンスをもたらしてくれるきかっけとなったのです。ギリシャ・ローマすなわち、キリスト教化以前のヨーロッパの文化や文典をもたらしてくれたのも彼らで、神学の圧倒的な優勢のもとに科学の発展も遅れていたヨーロッパは、学ぶところが多かったのです。

   そんなイスラム教は偶像崇拝を禁じているので、礼拝の場であるモスクにも、聖像やイコンなどはありません。しかし、モスクの内部の壁面には、見事な「アラベスク模様」がある場合が多く、イスラム美術の神髄を伝えてくれます。多くの場合は、反復する幾何学模様が描かれていることが多く、大規模なアラベスク模様を眼前に見ていると、永久に続くかのように思われます。神の創造した永遠、を表しているこれらの文様は、おそらく、ギリシャ・ローマの幾何学の成果も取り入れた広大なイスラム文化圏の創造で、異教徒や文化の異なる人間にとっても、イスラム芸術のすばらしさを伝えてくれます。

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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