人間を依存症にした唐辛子
植物は、子孫を残すために、昆虫や鳥類に種子の運搬、受粉の報酬を支払っている。なかでも人間は地上最高の運び屋であり、食べ物や美しいものを鑑賞する喜びを得ている。喜びには依存性のあるアルカロイドも含まれる。
アカシアの甘い蜜にはアルカロイドが豊富に含まれ、アリが蜜の依存症になると攻撃性やアカシアの樹木の上で活発に移動する能力が高まる。象やキリンに噛みついてまで樹木を守る用心棒に育てられているのである。
ヒトの唐辛子依存性はどうだろう。大脳は、舌が唐辛子の痛みを感じると、痛みを緩和するためにエンドルフィンを製造する。長時間のランニングの後に覚えるエンドルフィンの陶酔感と同じなのだ。南米で発見されてからわずか数百年の間に、人を依存症に陥れた唐辛子は栽培面積を拡大し、世界中でますます繁殖している。