ところてんの謎 壇蜜さんは「甘味処で酢醤油をかけるアウトロー」に惚れる

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猛暑ゆえの妄想

   このエッセイを読んで、二つのモヤモヤが解けた。まずは子どもの頃、故郷静岡の駄菓子屋にて1本箸で食べた、という淡い記憶である。あれは勘違いや年長者の意地悪ではなく、やはり「正式」なマナーというかローカル・ルールだったらしい。もう一つはその理由だ。蕎麦やうどんのように2本箸で食した場合、柔らかいところてんがブチブチ切れて食感が損なわれるという、なんとも理にかなった話ではないか。

   暑い夏の午後、あの涼感が連続して山手線のごとく喉を通過するところに価値がある。細切れになっては、ただのダイエット食である。

   上記エッセイには毎回、筆者による一句が添えられる。

   今回は〈すくわれたい羨(うらや)む箸先ところてん〉。ひょっとして37歳の壇蜜さん、ところてんのように、誰かに大切にすくわれたいと思っているのかな。

   今年の猛暑はまさに、ところてんの出番だろう。幻視や幻聴を招来するほどだ。水中でゆらゆらと誘うあの黒髪をだね、指一本ですくってみたいものであるなあ...そんな妄想を振り払い、とりあえずところてんを買いに出るおやぢであった。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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