幻だからこそ美しい
夏の野外コンサートの歴史はTHE ALFEEを置いて語れない。
「TOKYO BAY-AREA」だけではない。84年が横浜スタジアム、85年が同スタジアムで3日間。87年には静岡県日本平で日本で最初の単独アーティストだけのオールナイトコンサート。88年には大阪湾南港、札幌大倉山ジャンプ場、福岡海の中道、横浜本牧埠頭と四か所で開催、2009年まで連続して夏のイベントを開催。屋内だったのは2001年のさいたまスーパーアリーナだけだった。
「夏の伝説の主役」は彼らのための称号と言って過言ではないだろう。
THE ALFEEは先日、2018年7月28、29日。横浜アリーナで「結成45周年ライブ」を行った。
バンドやアーティストのキャリアの数え方は「結成」と「デビュー」と二つある。この日は「結成」がテーマ。デビューするまでの3人の生活や音楽の傾向に焦点があたるという珍しい内容だった。アマチュア時代にコピーしていた洋楽のカバーや影響を与えた音楽。たとえば彼らの曲になぜ変拍子や転調が多いのかをプログレッシブロックが好きだったからと解説してみせる。デビュー45周年コンサートだったら、そんな風に「素性」を明かすようなライブにはならないだろう。
甲斐バンドとTHE ALFEEがデビューした74年には、まだ60年代後半からの学生運動などの余韻が残っていた。甲斐バンドはデビュー当時のインタビューで「歩道の敷石をはがして機動隊に向かって投げる学生をニュースで見て、東京はすごいと刺激を受けていた。でも、自分たちが上京した時に、東京はもうそういう街ではなくなっていた」と話していたことがある。「BIG GIG」で歌った「東京の一夜」は、彼らのそんな思いを歌ったものだった。
THE ALFEEが結成45周年ライブで最後に歌ったのは「シュプレヒコールに耳を塞いで」だった。立て看板が立ちならぶキャンパスの青春群像。「さよなら1969年、愛しき革命戦士よ」と歌われている。「TOKYO BAY-AREA」の最後の「Rockdom~風に吹かれて」もテーマは1969年。「俺たちの時代を忘れないで」と繰り返されるバラードである。
ライブは一夜限りで終わってしまう。東京の街の様相もキャンパスの風景も変わって行く。でも、彼らが残した歌の中には、時代の青春が刻まれている。
それは幻だからこそ美しいのかもしれない。
(タケ)