初めて10万人を集めたコンサート
もうひとつ東京を舞台にした80年代の忘れられない伝説のライブがある。
甲斐バンドは86年6月末に日本武道館5日間公演で解散。その翌々月、THE ALFEEが86年8月3日に行った「THE ALFEE・SWEAT&TEARS・TOKYO BAY-AREA」がそれだ。日本で初めて10万人を集めたコンサートとしても知られている。
会場は東京湾埋め立て13号地。今、フジテレビが建っている一角。当時は船の科学館があるだけで他は雑草に覆われた更地。そこを整地する形で会場が作られた。ステージの長さ120メートル、高さ75メートルは当時としては史上最大だろう。だだっぴろい平地に集められた10万人は後方から見ても最前列が見通せない。一面の人の群れの向こうにそびえる巨大なステージが印象的だった。
まだレインボーブリッジもゆりかもめも開通していない。東西線の東陽町か木場からバスのピストン輸送。アンコールの「Rockdom~風に吹かれて」が終わって早々に会場を後にした記憶がある。
ちなみに今も使われている東京湾埋め立て地の「ベイエリア」という称号はこのライブが最初だった。ライブ会場はなくなっても名前は残るという意味でも稀有な例ではないだろうか。この時の観客数は99年にGLAYが幕張メッセに約20万人を集めるまで史上最多記録となっていた。
THE ALFEEは甲斐バンドと同じ74年のデビュー。でも、その後の活動の起伏は甲斐バンドとは対照的だ。明治学院大学の音楽仲間。「演奏していれば楽しい」という東京の音楽少年特有の欲のなさもあった。アコースティック主体のコーラスグループという当時のスタイルが浸透しないまま75年にレコード会社の契約が打ち切り。ライブハウスでの活動の傍ら、かまやつひろしや研ナオコのバックバンドをつとめ、再デビューしたのが79年。エレキを生かしたロック色の強いバンドとなってからの最初のヒットが83年の「メリーアン」だった。