「静脈産業」を支える在日韓国人の体系的調査をスタート

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「大震災での廃車のほとんどを在日韓国人が処理したのでは」

   そしてもう1社、岩手県一関市にある株式会社ヨシムラは、従業員数180人。銅、アルミなど非鉄金属の、有力企業だ。

   劉教授によると、ヨシムラの創業者も、青南商事の創業者と同様に九州からやってきた在日韓国人だという。

   銅スクラップである廃電線の再資源化や自動車リサイクルを主軸に、海外へのリサイクル事業を積極的に手がけている

   青南商事も、ヨシムラも、東日本大震災の時に大量発生した震災廃棄物の処理に大きく貢献した。

「東日本大震災で廃車になった膨大な数の車のほとんどを、在日韓国人が処理したのではないか」

   初代は個人経営の古物屑鉄商から出発した。戦後生まれの2代目が先代から経営権を譲り受け、企業化した。その後、2000年以降、高等教育をうけた3代目が先進的な大型設備や新しい経営手法を導入して環境ビジネスを確立した、という流れがあるようだ。

   これから名古屋、大阪、四国、九州のリサイクル事業者の調査に入る。こうした地道な調査をもとに、静脈産業の業界全体の売り上げの中で、在日韓国人系事業者が何割のシェアを占めているのかを調べてみたいという。

「在日韓国人が日韓のリサイクル産業に果たした役割とは何だったのか。そしてもう一点、日本の静脈産業の変遷を解明してみたい。昔は差別されていた業種だった。しかし、経済成長期に貢献できるようになり、今では持続可能な社会実現の中心的なビジネスとまで呼ばれるようになった。環境産業として重要な産業に発展した現在、時代の変化を体系的に整理、分析し、考察してみたい」

   在日韓国人からすると、「祖父が古物屑鉄商だった」という逸話は、ありきたりな話だ。しかし、それを体系的に書いた類書はない。埋もれやすい歴史なのだ。

   (公財)韓昌祐・哲文化財団 の助成事業によって、インビジブル(姿を現さない)ヒストリーの発掘が始まろうとしている。

   韓国出身の劉庭秀教授が、日韓の静脈産業における在日韓国人の社会・経済・国際的な位置づけと役割の変遷をいま明らかにする。

(ノンフィクションライター 高瀬毅)

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール

1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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