「楽園の三羽の美しい鳥」作曲したラヴェル 戦争へのやるせない思いを表現

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空軍に志願するも戦場には飛び立たず

   それにしても、ラヴェルはなぜ「鳥」を主人公にしたのでしょうか?

   実は、弟をはじめ、周囲の親しい人たちが続々と徴兵され、戦場に送り込まれた後、ラヴェルがいてもたってもいられず志願したのは、空軍だったのです。知り合いの政治家のコネを使ってまで、そして、自分の軽くて貧弱な体形を自覚していたラヴェルは、世界最初の空軍であるフランス空軍に入隊しようとあの手この手を尽くしたのでした。

   陸軍の歩兵、騎兵、砲兵、工兵の諸兵科に追加する形で、下院議会の議決を受けて航空隊が正式に発足したのは、1912年のことでした。148機の作戦機と15機の気球をもって第1次大戦に突入した空軍は、1918年11月の休戦までに3608機の機体を投入することになりました。4年間で5500人もの操縦士・偵察員が命を落とし、その死亡率は全体の31%にも達したのです。

   結果的には、運転手として配属され、戦場の空には飛び立つことのなかったラヴェルですが、戦地に赴く前に残した「楽園の三羽の美しい鳥」は、今でも、彼の戦争という理不尽なものに対しての、やるせない気持ちを伝えてくれます。

   フランス語で「パラディ Paradis」は、「楽園」とも「天国」とも訳せます。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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