音楽・映像配信などを手がけるUSEN-NEXT HOLDINGS(以下、USEN)が「ワークスタイルイノベーション」を掲げ、働き方改革に取り組んでいる。
この改革は、USENの宇野康秀社長の悲願でもあった。そのため社長自ら陣頭指揮を取り、30年越しの「大願成就」を目指す。2018年8月8日にはメディア向けに説明会を開き、宇野社長がその意図を語った。
働く「場所」「時間」を自由に
改革は、社内制度とオフィス環境で進められている。社内制度では18年6月から「スーパーフレックス」「テレワーク」を導入した。
USENではこれまで勤務時間を9時30分~18時に固定していたが、18年6月から「スーパーフレックスタイム」を試験的に開始。始業・終業時間を社員が自由に選べるようにした。一般的なフレックス制度では「コアタイム」と呼ばれる必須の勤務時間帯を設けることが多いが、同社ではそれがない。現在は一部の導入にとどまっているが、18年9月以降をめどにグループ全社員に当たる約4000人に対象を広げる予定だ。
「テレワーク」では、ノートパソコンとスマートフォンを全社員に貸与し、自宅や外出先でも業務に携われる環境を整えた。職場内では社員の座席は決まっていないため、オフィス内のカフェやラウンジで仕事をすることも可能だ。
「勇気を持って変えていこうと思った」
オフィスの環境面では18年7月に本社を東京のJR目黒駅前に移転し、社員のモチベーション向上にむけた大がかりな設備投資をした。
例えば、オフィス内に焼き立てのパンや飲み物を提供するカフェを併設。会議室に設置された専用端末から注文することもできる。そのほか、ネイルやヘアカット、靴磨きなどのサービスを受けられるスペースも作った。
8月8日にはメディア向けの説明会後に内覧会が行われ、かつて大型のM&A(合併・買収)を繰り返すなどして「ヒルズ族の兄貴」と呼ばれた宇野社長が働き方改革に至った経緯を、こう説明した。
「今年で社長業が30年になる。この30年間ずっと、会社のあり方や組織、マネジメントについて考えてきたが、大きな脱却ができなかった。このタイミングで大きな挑戦をするんだったら、組織のあり方やマネジメントについて勇気を持って変えていこうと思った」
USENは今後の目標として、現在の規模の約10倍にのぼる「売上高1兆円」を掲げている。働き方改革で社員の満足度や生産性を高めて、企業の成長につなげたいところだ。