吉田拓郎、夏のライブの主人公
「伝説」の最終章が始まる

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1985年に「つま恋」に戻る

   吉田拓郎と夏のイベント。彼は79年に愛知県知多半島の篠島を借り切った「アイランドコンサート・イン・篠島」も行っている。人口2000人あまりの島に2万人を超える観客が集まるというオールナイトコンサートも前例がなかった。

   「つま恋」に再び戻って来るのは85年の夏だ。7月27日から28日にかけての「ONE LAST NIGHT in つま恋」。「70年代に幕を引きたい」「生涯最良の日にしたい」という彼の希望に沿って集まったのは、CDを残さないまま終わってしまった幻のバンド新・六文銭や70年代にツアーを共にした猫、彼のバックバンドとしてプロデビューした愛奴(当時・現AIDO)、かぐや姫などの再結成はじめ、THE ALFEE、かまやつひろし、武田鉄矢、杉田二郎ら友人も参加。彼が歌ったのは72曲、開演午後5時、終演朝7時、夜があけても終わらないという長時間のイベントとなった。

   ただ、吉田拓郎の生き方、という意味で特筆しなければいけないのは2006年9月23日に行われた「吉田拓郎&かぐや姫 Concert in つま恋2006」ではないだろうか。85年は30代最後、20代最後だった75年から31年後。彼は還暦になったばかりだった。

   若者文化の旗手として時代を作ったアーティストが還暦になる。現役として野外イベントを行う。4万人近い観客の平均年齢は40代後半。それは若者の音楽として始まった日本のフォークやロックが大人の音楽として聴かれる新しい時代の到来を告げていた。

   「緊張して覚えてない」29歳とは違う成熟した大人の野外コンサート。同行取材していた中で最も印象深かったのが最後の曲をめぐるやりとりだった。

   75年の「つま恋」は、夜が白々と明ける中で歌われた「人間なんて」が代名詞のようになった。地平線を揺るがすような6万人の大合唱は音楽のエネルギーが爆発するようだった。79年の「篠島」も最後は「人間なんて」で終わっていた。かぐや姫との31年ぶりの「つま恋」でスタッフが描いていたのが「あの感動をもう一度」だった。最後は当然「人間なんて」というのがいつの間にか暗黙の了解のようになっていた。

   それに対して頑として首を縦に振らなかったのが吉田拓郎だった。

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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