吉田拓郎、夏のライブの主人公
「伝説」の最終章が始まる

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なぜ正確な人数が分からなかったのか

   話を動員数に戻そう。

   なぜ正確な人数が不明なのか。一つは、チケットの売り方があった。今のようなチケットシステムは確立されていない。プレイガイドに並んで買うという時代である。しかも場所は静岡県の掛川市。新幹線の駅はまだ開業していない。東京や名古屋、大阪など大都市のプレイガイドと東海道線沿線の県下のレコード屋や喫茶店での店頭での販売。スタッフが現金で回収するという方法しかなく、前売りは完売したということは分かりつつ、どこで何枚売れたかという正確な記録が残っていない。更に、消防など好意的でなかった関係各所に対して少な目な人数を申告することで波風を立てないようにするという配慮もあった。

   反響のすさまじさは一週間前から「つま恋」周辺にテントを張るなどして野宿する観客が数千人を超え、前日には一万人が集まったことがその一例だろう。「ワンステップフェスティバル」のような長髪の若者中心ではない。若者たちに一番影響力を持っていた、時代の寵児が行う前例のないオールナイトイベント。そのエネルギーは比較にならなかった。

   吉田拓郎は「演奏が始まってからのことはほとんど覚えていない」と言う。「この5万人が押し寄せて来たらどうなるんだ」という緊張感。71年の中津川フォークジャンボリーの当事者としては当然のプレッシャー。それは彼だけではない。筆者が見ていたのはステージ最前列とステージの間。撮影用のレールが敷かれている場所だ。取材関係者席がそこだった。何でそんな場所に集められていたか。もし、何かあった時にステージを守る要員になるためだったと知ったのは31年後2006年の「つま恋」でだった。

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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