日韓共同で薬物依存の治療法を探る

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   2016年、元プロ野球選手・清原和博氏が覚せい剤取締法違反で逮捕され、有罪判決を受けた。球界で存在感の大きな選手だっただけに大々的に報じられた。

   しかし、これは氷山の一角である。違法薬物を摂取した経験のある日本人は267万人といわれる。違法薬物が怖いのは、肉体も精神も蝕(むしば)む強い依存性があることだ。

  • 藤田保健衛生大学大学院と韓国の国立江原大学は、共同のプロジェクトを立ち上げた。テーマは「日韓共通課題である薬物依存の解明と治療」。若手研究者の人材育成と日韓交流が含まれている(写真・カメラマン 菊地健志、以下同)
    藤田保健衛生大学大学院と韓国の国立江原大学は、共同のプロジェクトを立ち上げた。テーマは「日韓共通課題である薬物依存の解明と治療」。若手研究者の人材育成と日韓交流が含まれている(写真・カメラマン 菊地健志、以下同)
  • 薬学博士の鍋島俊隆客員教授は、国立江原大学との共同研究のパイオニアだ。1996年からすでに20年以上、韓国の研究者たちと学術交流を積み重ねてきた貴重な存在だ
    薬学博士の鍋島俊隆客員教授は、国立江原大学との共同研究のパイオニアだ。1996年からすでに20年以上、韓国の研究者たちと学術交流を積み重ねてきた貴重な存在だ
  • 国立江原大学のキャンパスで。右が、韓国の薬物研究の第一人者である金瀅春(キム・ヒョンチュン)教授。左が、藤田保健衛生大学大学院の齋藤邦明教授。9 月中旬、齋藤教授が主宰する「国際トリプトファン学術会議」に金教授を招聘し、滋賀県立大学で講演会を開く予定
    国立江原大学のキャンパスで。右が、韓国の薬物研究の第一人者である金瀅春(キム・ヒョンチュン)教授。左が、藤田保健衛生大学大学院の齋藤邦明教授。9 月中旬、齋藤教授が主宰する「国際トリプトファン学術会議」に金教授を招聘し、滋賀県立大学で講演会を開く予定
  • 日韓のプロジェクトが注目しているのは、朝鮮人参に含まれるフィトケミカル(植物由来の化学物質)だ。どの程度、代謝の正常化に役立つかを調べると同時に、依存のメカニズムを解明しながら治療のための薬の創出につなげていく
    日韓のプロジェクトが注目しているのは、朝鮮人参に含まれるフィトケミカル(植物由来の化学物質)だ。どの程度、代謝の正常化に役立つかを調べると同時に、依存のメカニズムを解明しながら治療のための薬の創出につなげていく
  • (公財)韓昌祐・哲文化財団2017年度助成受贈者の齋藤邦明教授。日韓共同プロジェクトの中心人物。過去に米国国立衛生研究所で上席研究員、京都大学で教授を務めた。日韓共同で乱用薬物を研究した論文は、60本以上国際学術誌に発表してきた。今後の研究成果が期待される
    (公財)韓昌祐・哲文化財団2017年度助成受贈者の齋藤邦明教授。日韓共同プロジェクトの中心人物。過去に米国国立衛生研究所で上席研究員、京都大学で教授を務めた。日韓共同で乱用薬物を研究した論文は、60本以上国際学術誌に発表してきた。今後の研究成果が期待される
  • 藤田保健衛生大学大学院と韓国の国立江原大学は、共同のプロジェクトを立ち上げた。テーマは「日韓共通課題である薬物依存の解明と治療」。若手研究者の人材育成と日韓交流が含まれている(写真・カメラマン 菊地健志、以下同)
  • 薬学博士の鍋島俊隆客員教授は、国立江原大学との共同研究のパイオニアだ。1996年からすでに20年以上、韓国の研究者たちと学術交流を積み重ねてきた貴重な存在だ
  • 国立江原大学のキャンパスで。右が、韓国の薬物研究の第一人者である金瀅春(キム・ヒョンチュン)教授。左が、藤田保健衛生大学大学院の齋藤邦明教授。9 月中旬、齋藤教授が主宰する「国際トリプトファン学術会議」に金教授を招聘し、滋賀県立大学で講演会を開く予定
  • 日韓のプロジェクトが注目しているのは、朝鮮人参に含まれるフィトケミカル(植物由来の化学物質)だ。どの程度、代謝の正常化に役立つかを調べると同時に、依存のメカニズムを解明しながら治療のための薬の創出につなげていく
  • (公財)韓昌祐・哲文化財団2017年度助成受贈者の齋藤邦明教授。日韓共同プロジェクトの中心人物。過去に米国国立衛生研究所で上席研究員、京都大学で教授を務めた。日韓共同で乱用薬物を研究した論文は、60本以上国際学術誌に発表してきた。今後の研究成果が期待される

医学的、薬学的な治療法の確立を

   清原氏は、スポーツ総合雑誌『Number』(930号、2017年7月)のインタビューで、「精神力が強いから止められるとか、そういうものではない」と語り、薬物との戦いは一生続いていくと覚悟している。

   今のところ依存者の治療プログラムには、清原氏が受けているようなカウンセリングで、薬の誘惑に負けそうなときの対処法を学んだりする方法がある。

   他にも薬物依存を経験した人たちが集まって体験を語り合いながらお互いを支えていく自助グループの活動もある。こうした方法が功を奏している人もいるが、完全ではなく、半数以上が再び罪をおかす。

   医学的、薬学的な治療法の確立が待たれるが、可能性を探る研究は地道に行なわれている。その一つが藤田保健衛生大学大学院の研究グループである。医学博士の齋藤邦明教授と薬学博士の鍋島俊隆客員教授らは、韓国の国立江原(カンウォン)大学と共同でプロジェクトを立ち上げた。

   実は鍋島氏と国立江原大学の金瀅春(キム・ヒョンチュン)教授との共同研究の歴史は1996年から20年以上に及ぶ。今回の共同研究は、韓国でも、違法薬物を摂取した経験のある人が135万人を数えることも背景にある。両国の共通した社会問題を解決しようという貴重な試みを、公益財団法人韓昌祐・哲文化財団が助成した。

   薬物依存に対する医学的なアプローチの歴史を辿(たど)りながら、日韓共同研究とは、どのようなものなのかを紹介しよう。

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール

1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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