英語の「ユーモア」と同じ語源
当初、この曲集にタイトルをつけずにいたドヴォルザークですが、長年の取引がある、ドイツの出版社、ジムロック社に送る直前になって、「ユモレスク」というタイトルを楽譜に書き込みました。ドイツ語では「フモレスケ」とも呼ばれる「ユモレスク」――もちろん英語の「ユーモア」と同じ語源で、これはフランス語です――は、「奇想曲」と似たような意味合いの性格小品で、タイトルに深い意味はないのですが、しいて訳せば「気軽な軽い小品(集)」といったところでしょうか。ドヴォルザークの気分がまさに「ユモレスク」だったのでしょう。
全部で8曲のなかの第7番が、名ヴァイオリニスト・クライスラーによって、ピアノ伴奏を伴うヴァイオリン独奏に編曲されたことなどもあり、最も有名です。リラックスした感じ始まる主部の部分と、ボヘミアの哀愁を感じさせる中間部の旋律の対比もすばらしく、「ドヴォルザークのユモレスク」として単独で演奏されることも多く、さらにはクラシックのジャンルも超えて、広く親しまれている名曲となっています。
ドヴォルザークにとって、まことに実り多い、「夏のバカンス」だったのかもしれません。
本田聖嗣