ドヴォルザークが休暇中に作った「ユモレスク」 曲想は遠い異国の地で湧きあがった 

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英語の「ユーモア」と同じ語源

   当初、この曲集にタイトルをつけずにいたドヴォルザークですが、長年の取引がある、ドイツの出版社、ジムロック社に送る直前になって、「ユモレスク」というタイトルを楽譜に書き込みました。ドイツ語では「フモレスケ」とも呼ばれる「ユモレスク」――もちろん英語の「ユーモア」と同じ語源で、これはフランス語です――は、「奇想曲」と似たような意味合いの性格小品で、タイトルに深い意味はないのですが、しいて訳せば「気軽な軽い小品(集)」といったところでしょうか。ドヴォルザークの気分がまさに「ユモレスク」だったのでしょう。

   全部で8曲のなかの第7番が、名ヴァイオリニスト・クライスラーによって、ピアノ伴奏を伴うヴァイオリン独奏に編曲されたことなどもあり、最も有名です。リラックスした感じ始まる主部の部分と、ボヘミアの哀愁を感じさせる中間部の旋律の対比もすばらしく、「ドヴォルザークのユモレスク」として単独で演奏されることも多く、さらにはクラシックのジャンルも超えて、広く親しまれている名曲となっています。

   ドヴォルザークにとって、まことに実り多い、「夏のバカンス」だったのかもしれません。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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