夏休みの大切さ 池上彰さんは「俗世間から離れよう」と説く

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

休みを楽しむために

   ひとたび組織のルールから脱してみると、休みが待ち遠しいという気持ちになれない、というのは実感として分かる。私の場合、転身や独立ではなくただの定年退職なのだが、曜日の感覚がしだいに薄くなり、週末のありがたみは消えた。

   自由の身で初めて迎えたこの夏も、休暇とは無縁の四季の一つにすぎない。いつの間にか春と地続きで始まり、秋に融け込むように終わるはずだ。売れっ子の池上さんと違い、私の手帳はうれし恥ずかし、ケガレなき純白、毎日が休みのようなものである。

   ヨーロッパでは公務員もビジネスマンも、多くはバカンスを楽しむために働いている。だから8月は取材にならない。ならないのをいいことに、我らジャーナリストも休む。

   日本ではまだ、仕事のためのリフレッシュを目的に休んでいる。池上さんの言う「自分だけの時間」にしても、人生全体というより、バカンス明けの仕事を念頭に置いたものではなかろうか。よりよく働くために、よりよく休もうという発想とみる。

   私は現役諸氏に、逆のアドバイスを送りたい。次の夏休みを心と財布に遠慮なく楽しむために、ひいては退職後を好きにエンジョイするため...そこそこ働こう。

   もちろん、趣味のように仕事をしている、幸せなあなたは別である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

姉妹サイト