紙巻きたばこから加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」に切り替えることで、がんなどのリスクを低減できる――。
アイコスを販売する「フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)」が2018年7月18日、東京都内の日本法人で記者説明会を開き、このような試験結果を発表した。
5種類の化学物質で有意な差
アイコスを「リスクを低減する可能性のある製品」とうたい、販売してきたPMI。それに科学的裏付けを与えようとしたのが、今回の試験だ。
同社はすでに、紙巻たばこの煙には肺や循環器系の疾病につながる「超微細粒子」が5000億個含まれるのに対し、アイコスの蒸気にはそれらがなく、「有害物質」も平均90%少ないことを発表していた。
今回は、喫煙が影響すると考えられている「循環器系疾患」「呼吸器系疾患」「がん」のリスクについて、アイコスまたは紙巻きたばこを吸った際の影響を比較。試験は普段から紙巻きたばこを嗜む健康な成人約1000人を対象に、米国で約6か月実施した。
被験者は約半数ずつに分けられ、一方はアイコスを、他方は紙巻きたばこ(米市場で流通する標準的なたばこを基に作られた試験用)を半年間喫煙。どちらも一日平均で19本が吸われた。
その結果、上記の疾病を引き起こす可能性のある化学物質8種類のうち、5種類で統計的に有意な差があった。つまりアイコスは、紙巻きたばこに比べて疾病リスクを減らせることが分かった、という主張だ。
PMIのパトリック・ピカベット氏は、
「この曝露反応試験の結果によって、アイコスへの完全な切り替えにより、紙巻きたばこの喫煙を継続した場合と比較して、社会全体に与える悪影響のリスクと喫煙関連疾病のリスクが低減できることの証明に一歩前進した」
と話した。
米国ではFDAによる安全性の審査継続中
PMIは現在、世界38か国でアイコスを展開するが、米国での販売はまだ認められていない。 FDA(米食品医薬品局)での安全性に関する審査が続いているためだ。今回の試験結果はFDAに報告されており、販売の早期実現を目指す。
PMIは現在のアイコスを「プラットフォーム1」と位置付け、今後はたばこ葉を使わない電子たばこ「プラットフォーム4」の開発を目指し、さらなるリスク低減を進めている。
なお、米紙ウォールストリート・ジャーナルの2018年4月19日記事(電子版)によると、アイコスは日本のたばこ市場で3%(18年1~3月期)のシェアを握る。ただ、直前の四半期からは0.5%増にとどまった。どれだけ紙巻きたばこから切り替えさせるかが喫緊の課題だ。