わずか2分の間奏曲「熊蜂の飛行」 派手な技巧、近年はボーカロイド演奏も

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   先週は、「毒蜘蛛」を由来に持つおそろしげな「タランテラ」をご紹介しましたが、今週は、毒蜘蛛と同じぐらい人間にとっては恐ろしい昆虫、熊蜂(クマバチ)が登場します。人気曲で、広く知られているリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」です。

  • オーケストラの総譜。熊蜂が飛ぶような音はフルートとヴァイオリンでまず演奏される
    オーケストラの総譜。熊蜂が飛ぶような音はフルートとヴァイオリンでまず演奏される
  • 独奏楽器とピアノ伴奏のために編曲された楽譜。独奏楽器の超絶技巧曲を披露する曲としても人気が高い。
    独奏楽器とピアノ伴奏のために編曲された楽譜。独奏楽器の超絶技巧曲を披露する曲としても人気が高い。
  • オーケストラの総譜。熊蜂が飛ぶような音はフルートとヴァイオリンでまず演奏される
  • 独奏楽器とピアノ伴奏のために編曲された楽譜。独奏楽器の超絶技巧曲を披露する曲としても人気が高い。

蜂の大群が羽音を響かせながら海を渡る場面描く

   「ロシア5人組」という、国民楽派のグループの一人であったニコライ・リムスキー=コルサコフは、ロシア音楽の発展に心を砕き、作品の基礎にロシアの伝説や物語を多く採用し、また次世代ロシアを担う優秀な弟子も多く育てた人でした。

   そんな彼が1890年に、プーシキンの同名の詩を原作とし、ウラディミール・ベルスキーという人物が台本を書いた「サルタン皇帝の物語」というオペラ作品を作り上げます。王家の愛憎を童話的タッチで描いた物語でしたので、オペラも、どちらかというと子供に喜ばれるような作品でした。

   姉2人の王への讒言(ざんげん)によって、王妃の位を追われた母と、その愛情を受けて流刑の地ですくすくと育った王子が、「悪役」である叔母たちを懲らしめに行く場面の音楽が、「熊蜂の飛行」です。王子は、助けた白鳥の恩返しの魔法によって、なんと蜂に自らの姿を変え、海を渡って復讐に出発するのです。この場面で流れるオーケストラによる「間奏曲」が、「熊蜂の飛行」として知られた曲です。

   蜂の大群が、羽音を響かせながら海を渡る場面を、描写的に描いた音楽は、同じロシアの作曲家ラフマニノフがピアノソロに編曲したり、またその技巧的な派手さから、ヴァイオリンをはじめ、多くの独奏楽器向けに編曲され、大人気となりました。さらには、クラシックのジャンルをも超えて、ギターソロによるロックや、近頃ではボーカロイドによる演奏も多く見かけます。

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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