由来が恐ろしげな激しい舞曲「タランテラ」 超絶テクを駆使したリストのバージョン

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「毒蜘蛛パニック」を思わせる盛り上がり

   ハンガリー出身ではありますが、広く旅をしてフランスやドイツにも居住したリストは、イタリアにもゆかりの深い人でした。自身の結婚問題で悩んで、バチカンに直訴に行ったり、出家したりしたこともありますが、一方で、リストはクラシック音楽発祥の地であり、古代からの文明が折り重なるように体感できる「イタリア」に、ゲーテのように魅了された、といってもいいでしょう。

   そんなリストのピアノ作品に、「巡礼の年」というシリーズがあり、その第3集にあたる「巡礼の年 第2年補遺 ヴェネツィアとナポリ」の最終第3曲目が、「タランテラ」です。「巡礼の年」シリーズを締めくくるに値する、派手な曲を作るのに、南イタリアの激しい舞曲形式「タランテラ」をリストが選んだのは、自然なことだったのでしょう。

   冒頭から激しい連打とともに、不気味なダンスが始まるこの曲は、中間部では一転して、ナポリのゴンドラの船頭の舟歌を思わせるようなカンツォーネ風の旋律が出てきます。最後の部分では、リストの超絶技巧をフルに活かした激しいダンスになり、クライマックスを迎えるところなどは、まさに「毒蜘蛛パニック」を思わせる盛り上がりぶりです。

   ロマン派ピアノ曲の白眉の一つであるこの曲は、人気曲となり、現在では単独で演奏されることも多くなっています。毒のある蜘蛛は恐ろしいですが、それにインスパイアされてできた、ヴィルトオーゾな「タランテラ」は、今日も、我々を楽しませてくれます。 

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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