小袋成彬、「分離派の夏」
周りと同じように生きられない

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僕は芸術を追求したい

   アルバムを総じての印象は「アートとしてのポップミュージック」だった。ヒットチャートの順位やカラオケで歌われることを意識して作られたものではない、音楽でしか表現できないこと。彼は、自分にとっての「音楽」についてこう言った。

「何かを表現するのに最初に来るのは言葉なんです。文章。悲しみを表現するのにピアノの前でマイナーコードを弾くということにはならない。そういう意味では音楽家ではないなと思います。でも、言葉では表現できない感覚や感情を表現できるのが音楽なんです」

   ポップミュージックは、作り手にとっての「作品」と「売れる」ということで評価される「商品」という二つの側面を持っている。彼はTokyo Recordingsのレーベルオーナーとして「今、流行っている音楽、売れている音楽を徹底的に研究した」と言った。

「何が人の心をとらえるのか、どんなテンポが聞き手を踊らせるのか。それらと同じものを作るスキルをどう身に着けるか頑張ってました。でも、そういうことで俺は死ねるのか、と思った。もうやりません。音楽を『商品』と思うのはビジネスをしている人たち。僕は芸術を追求したい。そもそも関係のないものだと思います」

   アルバムの資料に「分離派の夏」完成に寄せて、という一文があった。その中で彼はこう書いていた。

「本作品は『分離派』として生きた二十六年の弔いであり、慰みであり、癒しである」

   このために自分の人生があった。

   そう思えるデビューアルバムで新しい人生を歩き始めた27歳の初めての夏――。

   今年、彼は野外フェスに軒並み参加する。

   真夏の太陽の下で、どんなステージを見せてくれるのだろう。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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