数奇な生涯とベールに包まれた「宮中祭祀」の日々
内掌典と呼ばれる人たちがいる。皇室の祭祀を内から支えてきた未婚の女性たちだ。その伝統は古代から口伝でのみ受け継がれ、今も宮中三殿で起居する内掌典によって譲り続けられている。『皇室の祭祀と生きて 内掌典57年の日々』(著者:髙谷朝子 河出書房新社 907円)では、戦中に19歳で拝命してからのさまざまな出来事が時系列で語られている。先輩から指導を受け、髙谷さんは徐々に内掌典として成長。穢れを嫌う祭祀にとっての「次」と「清」とは? 食べ物や着物、限られた内掌典しか担うことのできない重儀「御鈴」とは? 昭和天皇皇后両陛下との思い出、皇太子(今上陛下)のご成婚、即位の礼、退官まで...。10代だった一人の女性が成長していく過程で、お堀の内側から祈り続けた半世紀の想いを綴る。