ソニーは、薄型テレビ「ブラビア」シリーズから2018年7月6日、4K液晶の「業務用ディスプレイ」として「BZ35F/BZシリーズ」を発売する。
テレビチューナーは搭載せずネット動画が見られる同製品は、発売前から「NHKが映らないテレビ」としてネットなどで注目が集まっていた。受信料の支払いをめぐってNHKともめているホテルなどにとって「切り札」になるのではないかというわけだ。
受信料支払い義務はワンセグも含む
放送法64条1項は「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定。これが憲法が定める「契約の自由」に反するとして、争いが法廷に持ち込まれたが17年12月、最高裁は「合憲」の判断を示した。18年3月には東京高裁がワンセグ放送を受信できる携帯電話の所有者にも支払い義務を認めている。
NHKの地上デジタルの受信料は月額1260円~。同局の番組を見ないというテレビ所有者を中心に、この受信料の支払いに異を唱える人は多い。ソニーは受信料議論が活発化した18年3月に「BZ35F/BZシリーズ」を発表。発売が近づくにつれネット上で注目が高まっていた。
同製品は無線LAN機能ならびに「Android TV」機能を搭載している。サイズは43型~83型までで、オープンプライス。43型は、製品の価格比較などができる買い物情報サイト「価格.com」を見ると、10万円前後。業務用ではあるが、一般人にも手が届く価格帯ということで余計に注目されている。
テレビがなくても民放番組が見られる
BZ35F/BZシリーズはチューナーがないため、当然ながら地上デジタル、BS・110度CSデジタル、スカパー、CATVなどの放送を見ることはできない。
だが、無線LAN機能と「Android TV」機能が搭載されているため、インターネットを通して、無料配信の民放の番組を含め、さまざまな動画コンテンツを視聴することができる。たとえば、インターネットテレビ局「Abema TV」、フジテレビが運営する動画配信サービス「FOD」、テレビ東京が運営する動画配信サービス「ネットもテレ東」などがある。
また、「Netflix」「Hulu」「Amazon Prime Video」「U-NEXT」「dTV」など、定額制の動画配信サービスも多い。バラエティ、邦画、アニメ、海外ドラマ、洋画などといったコンテンツが充実している。
なお、NHK放送も「NHKオンデマンド」で一部の番組を配信している。配信期間中に何度でも番組を視聴できる「見逃し見放題パック」は月額972円だ。
NHK放送の番組や、民放のテレビ番組をリアルタイムで見ることにこだわらない人には需要がありそうだ。また、客室テレビの受信料をめぐりNHKと意見が対立しているホテルの関心も引きそうだ。18年2月には、NHKが客室テレビの受信料を支払わないホテルの運営会社を訴えた裁判で、最高裁はホテル側に客室数に応じた受信料をテレビ設置時から支払う義務があることを認める判断を示した。