収まりのいい居場所
誰しも若いころ、一度は「上」にのぼりたい、のぼったらさらに上を目指したいと思うだろう。「上」とはどこか分からないまま、別の景色を見てみたいと、ひたすら「下ではないどこか」に向けてもがく。
ところが、働き盛りになると疲れてくる。今の地位を守るだけでもしんどいのに、もういいじゃないかと。せいぜい人事で泣き笑いがある程度のサラリーマンはまだいい。自営業はあきらめたところで終わってしまう。
究極の個人営業である芸能人の場合、視聴率、集客数、レギュラー本数、好感度といった数字でギャラや「上下関係」が日々入れ替わる。だからおのずと振幅の大きい人生になる。それに耐えられる人だけが生き残る世界である。
ひとつ上を無理して狙い、階段を転げ落ちる人はいるが、自ら階段を一つ二つ降りられる人は、鈴木さんが言うようにそんなにいないのかもしれない。
それは、収まりの良い「居場所」を探すことでもある。人生の半ばまでに、居心地のいい場所を見つけられた人は幸せだと思う。よゐこも悪い子も。
冨永 格