ヴァイオリンの難曲からピアノ独奏へ バッハとブゾーニ、2人の天才の「シャコンヌ」

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ピアノにとっても大変な難曲に

   「シャコンヌ」はもともとヴァイオリンの究極技巧をつかった傑作でしたが、ピアノに匹敵するような音の数はありません。ブゾーニは大胆にも、バッハのオリジナルに和音を付け加える、という大胆な「加筆」を行っているのですが、自らがスーパーピアニストであり、作曲家であり、バッハの楽譜の研究家でもあったブゾーニの編曲は的確で、これはひょっとして元からピアノの曲だったのではないか!・・または、バッハ自身がピアノ版を書き残していたのではないか!・・・と思えるぐらいの出来栄えになっています。

   バッハのシャコンヌそれ自体が人気曲目ですから、ピアニストはブゾーニ本人も含めてこぞってこの曲を取り上げ、現代でも重要なレパートリーとなっています。

   ただし、天才バッハが技巧を凝らしたヴァイオリンの曲が原曲で、それをスーパーピアニスト、ブゾーニが編曲したので、ピアノにとっても大変な難曲に仕上がっています。それがまた、ピアニストの挑戦意欲を掻き立てるのかもしれません。

   ともあれ、2人の天才が作曲・編曲したことが実を結び、ピアノ編曲版も、原曲のヴァイオリン独奏版も、現在でも両方とも頻繁に演奏されています。編曲は通常、「楽器の都合」で仕方なく編曲する、ということも多いのですが、この曲は、もとからピアノ曲だったではと言えるほど、完成度が高いからなのかもしれません。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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