ピアノにとっても大変な難曲に
「シャコンヌ」はもともとヴァイオリンの究極技巧をつかった傑作でしたが、ピアノに匹敵するような音の数はありません。ブゾーニは大胆にも、バッハのオリジナルに和音を付け加える、という大胆な「加筆」を行っているのですが、自らがスーパーピアニストであり、作曲家であり、バッハの楽譜の研究家でもあったブゾーニの編曲は的確で、これはひょっとして元からピアノの曲だったのではないか!・・または、バッハ自身がピアノ版を書き残していたのではないか!・・・と思えるぐらいの出来栄えになっています。
バッハのシャコンヌそれ自体が人気曲目ですから、ピアニストはブゾーニ本人も含めてこぞってこの曲を取り上げ、現代でも重要なレパートリーとなっています。
ただし、天才バッハが技巧を凝らしたヴァイオリンの曲が原曲で、それをスーパーピアニスト、ブゾーニが編曲したので、ピアノにとっても大変な難曲に仕上がっています。それがまた、ピアニストの挑戦意欲を掻き立てるのかもしれません。
ともあれ、2人の天才が作曲・編曲したことが実を結び、ピアノ編曲版も、原曲のヴァイオリン独奏版も、現在でも両方とも頻繁に演奏されています。編曲は通常、「楽器の都合」で仕方なく編曲する、ということも多いのですが、この曲は、もとからピアノ曲だったではと言えるほど、完成度が高いからなのかもしれません。
本田聖嗣