ヴァイオリンの難曲からピアノ独奏へ バッハとブゾーニ、2人の天才の「シャコンヌ」

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   クラシック音楽は長い歴史を持つため、その歴史の中で磨かれて、傑作のみが後世に伝わり、現代の我々はそのレパートリーを享受することができます。1つの傑作の裏には、おそらく万を超える忘れられた同時代作品があったはずで、現代の作曲家たちも、自分も時代を超える傑作をものにしたいと、日々努力しているわけです。

  • 楽譜には「バッハ作品番号1004のヴァイオリンのためのパルティータ2番が原曲」と書かれている
    楽譜には「バッハ作品番号1004のヴァイオリンのためのパルティータ2番が原曲」と書かれている
  • バッハのヴァイオリンの原曲も難曲だが、ヴィルトオーゾ・ブゾーニの編曲したピアノもかなりハードだ
    バッハのヴァイオリンの原曲も難曲だが、ヴィルトオーゾ・ブゾーニの編曲したピアノもかなりハードだ
  • 楽譜には「バッハ作品番号1004のヴァイオリンのためのパルティータ2番が原曲」と書かれている
  • バッハのヴァイオリンの原曲も難曲だが、ヴィルトオーゾ・ブゾーニの編曲したピアノもかなりハードだ

ヴァイオリンソロによって壮大な世界が描かれる

   歴史に耐えた名曲たちを、ただそのスタイルで演奏するだけでなく、形を変えて演奏する試みも頻繁に行われます。演奏する楽器の編成を変えたりするのです。そうやって「編曲」されたことによって、さらに名曲の誉れが高くなり、より一層人気が出たという曲がクラシックには数多くありますが、今日は、J.S.バッハの「シャコンヌ」の編曲作品のうちの1曲を登場させましょう。

   「シャコンヌ」は、もともとヴァイオリン独奏の曲で、正確には、「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ より パルティータ第2番の第5曲 シャコンヌ」という曲です。バッハが音楽好きのケーテン侯の宮廷楽長をしているときに作曲された作品のうちの一つで、ヴァイオリン独奏でどこまで音楽を作れるかという限界に挑戦した曲といっても言い過ぎではない曲で、難技巧を駆使して、ヴァイオリンソロによって壮大な世界が描かれます。現代のヴァイオリニストにとっても「レパートリーに欠かせないバッハ作品」となっています。

   このオリジナル曲が完成されたのは1720年ごろ、まだバロック時代のことで、ピアノという楽器は発明こそされていたものの、改良されてはおらず、ほとんどチェンバロに近い弱々しい音しか出ない楽器でした。バッハは試弾したことはあるものの、ピアノ独奏のためになにか作ろうという気はあまり起こさなかったようです。

   時代ははるかに下って、19世紀も終わりにさしかかった1894年ごろ、イタリア生まれのピアニストにして作曲家、指揮者でもあったフェルッチョ・ブゾーニが、19世紀を席巻した楽器であるピアノ独奏のために、この「シャコンヌ」を編曲したのです。

本田聖嗣プロフィール

   私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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