どんなにマニアックでも一人よがりにならない
90年代に「スタレビの謎」と言われたことがあった。ウッドストックに象徴される70年代前後のロックやAORと呼ばれるその後のアメリカの大人向けのロックに傾倒し、ジャズや歌謡曲の要素も織り込んだ多彩なポップスがなぜ爆発的なヒットにならないのか。すでに武道館コンサートも行いツアーはどこも満席、音楽通にも評価の高いライブバンドが、なぜカリスマ的存在にならないのか。80年代前半は、尾崎豊が登場し、浜田省吾や佐野元春ら、メッセージ性の強いロックが主流になる時代だった、フォーク系の事務所に所属していた、テレビよりもライブを優先していた、などいくつかの要因はあるものの、今でもなぜだったんだろうと思う事がある。
「自分たちでははっぴいえんどや山下達郎さんの流れの音楽のつもりでしたけど、そう思ってもらえなかった(笑)。お笑いの要素が強かったからでしょうか(笑)」
6月27日に発売になる4年ぶりのアルバム「還暦少年」は、そんなキャリアの中でも特筆されるべきアルバムだと思う。山下達郎や小田和正のライブなどで知られる4歳下のギタリスト、佐橋佳幸を初めて外部プロデューサーとして迎えている。
「影響されている音楽が似ているから言わなくてもわかる。自分たちでやっているともっと作りこむ、もっと練り上げようと思うところを、これでいいんじゃないですか、と言ってくれる。目から鱗のレコーディングでした」
スターダストレビューのライブは、「音楽を楽しんでいる」という一点に尽きる。どんなにマニアックなことをやっていても一人よがりにならない。2001年に静岡県掛川市の「つま恋」で行った「100曲ライブ」、2012年にさいたまスーパーアリーナでの「5時間おみやげつきライブ」、去年同所で行った「35周年大宴会」など、とことん楽しもうという姿勢に貫かれている。去年は、小田和正、鈴木雅之、KAN、スキマスイッチ、渡辺美里、松たか子ら11組のゲストも参加したお祭りだった。
新作アルバム「還暦少年」は、そんな「音楽好き」ならではのアルバムになっている。楽器や機材からこだわったという音楽のスタイルはロックやファンク、ラテンやブルースと幅広い。どの曲にもバンドメンバーのコーラスがふんだんに取り入れられている。力が抜けて心地良いロックアルバムはキャリアあってこそだ。
還暦を迎えたロック少年たちーー。
ジャケットは、迎えられなかった同世代のバンド仲間の娘さんが書いたものだそうだ。
(タケ)