史上最多シングル・アルバムセールス
この日、彼が何度となく口にしたのが「圧倒的なドーム感」と「圧倒的なファイナル感」だった。
彼のコンサートで最多という16人編成のバンドの音の厚み。ストリングスやホーンと今の日本の最強メンバーのバンド個々の楽器の特性を生かした演奏。クラシックの要素も取り込んだオーケストラアレンジとバンド演奏のアンサンブル。巨大な空間と独特なエコーを計算したようなスケールの広がり。揺るぎない演奏は大地を踏みしめるようであり5万人近い観客の温かい手拍子は遥かな潮騒のように聞こえた。
その「圧倒的なドーム感」は、2000年以降の彼のライブに欠かせない音楽監督、プロデューサー、アレンジャーのキーボーディスト、井上鑑あってこそだ。彼を筆頭に強者ミュージシャンの間で鍛えられ、学び、今の福山雅治があると再認識させられるステージだった。
あの日と違う姿――。
2001年がそうだったように、一曲目にステージに一人で登場した彼が弾いていたのはギターではなくバンジョーだった。
花道を軽やかな笑顔でステップで歩きながら弾き語りで歌ったのはアルバム「残響」中の「幸福論」。二曲目はインスツルメンタルのドラマ主題歌「vs.2013~知覚と快楽の螺旋」だった。センターステージでムービングライトを浴びながらエレキギターを引き倒す姿は、少なくとも20代では見せられなかっただろう。
ソングライターとしての成長とミュージシャンとしての成長。この日、披露された新曲の中には「失敗学」「暗闇の中で飛べ」などもあった。「幸福」も「快楽」も「失敗」も「暗闇」も歌い、時には照れながらお面のお尻を見せる茶目っ気もある。
それこそが彼の手にした「年齢相応」ではないだろうか。
史上最多シングル・アルバムセールス男性ソロアーティスト、福山雅治は40代最後の夏を迎えようとしている。
(タケ)