社会保障の「根っこ」について考える

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議論を通じて結論が変わってくる

   表側の「高校生・大学生がポジティブに語ってみたら」編では、学生4~5人が1組となり、いくつかの社会保障の課題について、グループディスカッション(社会保障の哲学カフェ)を行った様子がレポートされている。

   最初は、やや表層的な理解の下で議論がスタートするが、語り合う中で、中身が深まり、展開していく様子は、「感動的」ですらある。学生達の感性の豊かさと、グループディスカッションの持つ威力が存分に発揮されて、説得力のある結論が生み出されてくる。

   例えば、「お金持ちに年金を給付することは必要なのか」というテーマの場合、話し合いの当初は、格差を減らしていく観点から、お金持ちに年金を給付することは、必要ではないとの主張が多かった。しかし、議論を続けていると、次のような意見が出てきた。

「高所得者が年金保険料を払うだけ払って、その払った恩恵を受けられないことが分かっていたら、システム自体におそらく参加しなくなってしまう」
「年金なんて屁でもないお金持ちの人もいると思うんですよね。でも、だからこそ、そこで『おまえにとって年金は屁でもないから切るぞ』ではなくて、『権利は与える、もらうかもらわないかはおまえの自由だ』ぐらいのスタンスの方が、お金持ちの人も、デメリットというか、差別された感じが少ないのかなと」

という感じに、お金持ちとはいえど、年金を出さないことにすると問題があるぞとなってきた。

   そして、さらに発展し、次のような意見が出てきた。

「(社会保障とは)社会を分断させないようにしようというのが基にあるんだろうね。お金持ちに年金を給付しないとなると、システムに参加させないのと同じで、それってある意味分断じゃん」
「年金に関しては、ちゃんとみんなにあげなきゃ駄目だよね。その分配量は考えないといけないけれど、制度に参加してもらうためにも、あげなきゃいけないよね」

   社会保障が、「社会を分断させないためにある」という指摘は、実に本質を突いたものだと思う。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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