20年で半減
昨今、昔ながらの本屋を「リアル書店」と呼ぶことがある。それほどまでに「ネット書店」が一般化してきたということだ。本そのものも電子データとして売買されている。
林さんがアマゾンを「あんなに嫌い」なのは、ネット書店と電子書籍の両方で支配的な地位を占めているからだろう。まさに「駅前書店」の天敵にして脅威である。
とはいえ、作家たちが自らを石炭や炭鉱に例えるのは自虐が過ぎる。筆やペンがPCになっても、文筆の営みは変わらない。石炭はエネルギー革命の中で石油や天然ガスに敗れ去るのだが、文学という知的活動は永遠だし、まして人気作家が路頭に迷うはずはない。
石炭に例えるべきはリアル書店である。業界統計によると、全国の書店は約1万2000店で、2000年当時に比べほぼ半減。書店のない市町村も400を超す。
苦境は地方の中小だけではない。東京の青山ブックセンターは、深夜営業で知られた六本木店(80年開業)を6月に閉める。「都市の文化拠点がまた失われる」と嘆きたいところだが、ツイッターで見た限り、とりわけ50歳前後のバブル世代では「思い出の待ち合わせ場所が消えちゃう」といった反応が目立った。「リアル」の惜別である。
ツイッターといえば、最近こんなつぶやきにも出会った。
「ネット通販は便利だけど『探してない本』に出会えないんだよね。書店はぶらぶら背表紙見ながら歩いて、面白そうなのと出会うのが好きだった」
本にも人にも、しばしば運命的な出会いがある。それもまた、「ネットではかなえられないリアル」のひとつである。
※なお幸福書房については、店主、岩楯幸雄さんの著書「幸福書房の四十年 ピカピカの本屋でなくちゃ!」(左右社)に詳しい。
冨永 格