氷川きよし、年160本のライブ
演歌を背負うつもりは「ナシ」

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「元々ポップスを歌ってましたから」

   彼の中に「演歌」を背負っていこうという意識はあるのだろうか、と思った。彼は、「おこがましいんですが、ないです」と言ってこう続けた。

「そうして欲しいという方もいらっしゃるんですけど、重圧というか荷が重いです。日本人として演歌の景色を歌わせて頂いている感じですし。演歌を歌ってらっしゃる方には両親の影響で子供の頃から聞いていたとか、民謡を歌っていたとか、英才教育の方が多いんです。僕の場合、元々ポップスを歌ってましたから。喜ばれたいという思いで演歌をやったんで曲も知らない。始めのうちは小節がうまく回せなくて人前で歌えない。コンプレックスでしたね。泣いてました。真似るを学ぶ、にしてしまいました(笑)」

   肝の座った明るさというのだろうか。その歌に対しての覚悟のような本気さ。出し惜しみしないガチンコ感。演歌系の歌い手にともすれば感じる「小手先」感がない。はみだしそうな感情。ほどほどの予定調和に収まらない。彼のライブやCDに感じたのがそれだった。その根源になっているのがそうした「コンプレックス」や「歌わせて頂いている」という謙虚な意識なのかもしれない。

   去年、彼はアニメ「ドラゴンボール超」の主題歌「限界突破×サバイバー」を歌った。アニメ主題歌特有の早いビートのロックである。さいたまスーパーアリーナで行われたアニソンのイベントにもシークレットゲストとして登場。3万人を前にアニメ風な衣装で歌い喝采を浴びた。

   新作アルバムのサブタイトル曲「勝負の花道」には、「海路は亜細亜へ世界へと」という歌詞があった。

「可能性の扉が開きましたね。今までは演歌歌手だからやったらいけないとか思うこともあったんですけど、あの曲に挑戦したことで血が騒ぎました。日本語で歌う曲が世界につながる。それに気づいたのはアニソンを歌ったからですね。スーパーアリーナには外国人もたくさんいらっしゃいましたし。セールスにつながるかどうか分からないんですが、人生80年として残り40年。歌で色んな表現をしてゆくのが大好きなんですね」

   

   「そろそろ"演歌名曲"という縛りは外したいかな」といたずらっぽく笑う新作アルバム「新・演歌名曲コレクション7・勝負の花道」は5月29日発売。美空ひばりの81回目の誕生日だった。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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