胃袋の世界一周 松尾スズキさんはミャンマー料理に縁を感じた

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東京のグルメ指数

   手ごろな価格とレベルで、本物かそれに近い各国料理を味わえるという意味で、日本の得点はかなり高いと私も思う。東京のグルメ偏差値は世界一かもしれない。

   余談になるが、私が経験した任地でいえば、自国料理に自信がありすぎるパリより、ブリュッセルの水準が高かった。ベルギーはもともと美食の国として知られており、1950年代から60年代、いまの欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の本部が置かれたことで、舌の肥えた外交官やメディア関係者が集まる国際都市になった。彼らの母国で名を成した名店や、そこで修業した料理人が相次いで店を出し、競い、味に磨きがかかった。

   世界の味を食べ歩く連載の1回目はミャンマーである。これが、すでに店ごとの評価が定まったフレンチやイタリアンでは、どこをどう書いてもカドが立つ。あるいは陳腐になる。なにしろ、この国には私のような食通気取りが山ほどいて、日々、文句のつけ先を探しているのである。

   だから、松尾さんがエスニックのミャンマー料理に縁を感じたのは正解だった。余計なお世話だろうが、とりあえずは中東・アフリカや東欧など、日本ではマイナーとされる地域を探索するのが無難かもしれない。

   「胃袋がつないだ縁の意味を求めて」という松尾さんの旅。残念なのは登場が隔号になることだ。掲載誌は月2回の発行なので、実質「月刊」の楽しみとなる。世界一周の先は長いが、空腹は最高のスパイス。食いしん坊の一人として、気長に次の旅先を待ちたい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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