北朝鮮での24年間の歳月
「煙草の火を貸してくれませんか」。恋人と語らう柏崎の浜辺で、声をかけてきた見知らぬ男。これが「拉致」の始まりだった。『拉致と決断』(著・蓮池薫、新潮社、1404円)は、拉致された北朝鮮での24年間の歳月を初めて綴った衝撃の手記である。
拉致、それは1978年7月31日だった。自由を奪われた生活、脱出への希望と挫折、自動小銃音の恐怖、飢えの知恵、拾い上げた1粒のトウモロコシ、戦慄した洗脳教育、子どもについた大きな嘘――。必死に生き抜いた迫真の記録である。
著者の蓮池薫さんは中央大学在学中に拉致され帰国後に復学・卒業し新潟大学大学院修了。現在は新潟産業大学准教授を務めながら執筆、翻訳に携わっている。『半島へ、ふたたび』で新潮ドキュメント賞を受賞。