四季の塩を味わう 北村森さんに見る「小異」の書き分け術

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「広告」に堕さないこと

   新聞の経済面にもいえることだが、この種のコラムで個別商品を取り上げる場合、案配が難しい。しょせん筆者の主観とはいえ、ボロクソに書けば抗議されかねず、ほめちぎれば広告臭が漂う。書き手と媒体に信用があって、初めて作品となるジャンルなのだ。

   北村さんは独立後、地域興しなどの分野で実績を積んだある種の権威。テレビで消費トレンドの解説をする姿を見れば、この人が言うなら大ハズレはなかろうと思う。私だって、同じ商品をそこそこ魅力的に書く自信はあるけれど、その分野での知名度=信用力の差は如何ともしがたい。専門ライターの強みである。

   百姓庵のHPには「約33億年という長い間、生物は海の中にしか存在しませんでした。海という漢字は母なる人の水と書きます。海はあらゆる生命の母なのです」とある。

   こういう職人肌の塩づくりをひとことで表せば...「こだわり」とでもなろうか。書き手には、生産者のこだわりに応えたうえで、読者(消費者)を納得させる筆力が問われる。商品の小異を峻別し、必要なら用例まで添えて文字化する技術、サービス精神である。

   私も一念発起し、砂糖あたりを産地ごとに書き分けてみようか。甘いか。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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