「ギタースタイルのピアノ曲」が大ヒット アルベニスの「アストゥリアス」

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ロックミュージシャンも...広く演奏される人気曲

   アルベニスは、未完の曲も、タイトルだけは書き残していたので、なんと彼の死の数年後、ドイツの出版社の手によって、全8曲からなる「スペイン組曲 完成版」が計画されました。足りない第4、5、6、8曲は、アルベニスの他の作品から転用して、ひとつの曲集として出版されたのです。その折、「スペインの歌」の「前奏曲」は「アストゥリアス(伝説)」という題名とサブタイトルをつけられて5曲目に配置されます。音楽的には、この曲は、スペインと縁の深い楽器、ギターの演奏を模したピアノ曲で、「スペインらしさ」を我々が最も感じるスペイン南部アンダルシア地方のフラメンコ・スタイルで書かれているのですが、皮肉なことに、あまり関係のない北部スペインのアストゥリアス地方の名前が付けられてしまったのです。

   ところが、このちぐはぐな題名にかかわらず、ギタースタイルのピアノ曲だからということで、この曲は容易に...というより、ほぼ完璧にギター曲に編曲することができました。フランシスコ・タレガや、アンドレアス・セゴビアといったギタリストたちによって、オリジナルの調も変えて編曲され、広く演奏されるようになると大ヒットし、クラシックの枠も超えてロックなどポピュラーの音楽家たちによっても取り上げられることになり、いまやオリジナルのピアノ曲よりギター版のほうが親しまれている、といってもよいくらいです。

   アルベニスは、地方色豊かなスペインを描く組曲の冒頭に演奏されるように、前奏曲として、フラメンコ風のこの曲を作曲したのですが、そのギター風のスタイルゆえ、彼の死後、思わぬ経緯を経て、「アストゥリアス」は単独で愛される「スペイン風の曲」となったのです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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