読んで幸せ、東海林節
おそらく東海林さんは、初めからカーリング女子(LS北見)に感じた心地よさを書きたかったのだろう。なにしろ、テレビで試合を見続けていたのである。
ではどんな仕掛けで、「食」という自陣に取り込むか、どんな食べ物や料理に例えるか。無限の引き出しから手練れが選んだのが、かき揚げだった。冒頭の「天ぷらvsフライ」は軽いファンサービスで、本題との関係は薄い。
花形のスケートやスキーに比べ、五輪以外では注目されない地味なスポーツ。役割分担とチームワークが重視されるカーリングを料理で表現すれば、やはりかき揚げになる。他のメニュー、例えば五目ソバや八宝菜では一体感に欠けるというものだ。
カーリング女子=かき揚げという一見強引な比喩が、あちこちに埋め込んだレトリックで滑らかにつながる。最たるものは、裏方に徹した主将、本橋麻里さんに小麦粉役を振ったことだろう。
「小麦粉でまとまったLS北見というかき揚げの味を、われわれは今回の平昌オリンピックで味わったのだと思う」
この作者の随筆は、読む人を幸せな気持ちにさせる筆致で一貫している。これに本業のマンガ風スケッチを添えることで、比類なきホンワカ感を醸し出す。食の話題に限らず、コラムや随筆でいちばん大切なのは「共感」の要素だと改めて思った。 読み終えて、思わず「そだね~」と呟かせる力である。
冨永 格